*短編集* 『 - 雨 - 』
「髪とかも拭いた方がいいよ。冷えたら風邪引くし」
眼鏡をかけてやりながら言うと、彼女はくすぐったいのか少し表情を崩す。
そんな様子を可愛いなぁと思いながら見つめて……その下、濡れて張り付く白いブラウスに視線を移した。
濡れたブラウスに透けた彼女の白い肌はとても綺麗で自然と喉が鳴りそうになるが、それと同時におかしな気分になっている自分に嫌悪感が募る。
自分なんかが汚していい子じゃないのにと。
今まで付き合ってきた女とは違うのに……と。
でも、そんなのは言い訳で。
本当はただ怖かっただけだったのかもしれない。
彼女にこれ以上溺れてしまうのが。
一度でも好きだと言ったら……身体を重ねたらきっと、もう本当に離してやれなくなりそうで。
狂気的な自分の心が、怖かったのかもしれない。
水分を過剰に含んだ重たい空気が、部屋の中に充満する。
まだ日中だっていうのに降り出した雨のせいで外は暗く、電気をつけていない部屋は薄暗かった。
その中で、彼女の存在だけがキラキラと光る。