*短編集* 『 - 雨 - 』
「タオル、必要ならもっと持ってくるから」
やましい心を笑顔で隠してタオルを差し出すと、彼女はためらった後、それを受け取ろうとして……何を思ったのか手を引っ込めてしまう。
それから……一歩近づくと、トンと俺の胸におでこをつけた。
――触れた部分から。感じる彼女の香りから。身体が熱に浸食されていく。
「告白……本当は断れなかっただけなんでしょう……?」
「……え?」
突然の行為に驚きながら聞き返すと、彼女が言う。
震えてはいるけど……でも、しっかりと俺に伝えようとしていた。
「私が可哀想だから断れなくて……ただそれだけだったんでしょ?」
彼女の言っている意味が分からなかった。
だって俺は彼女が好きだ。
恐らく、彼女が俺を想う気持ちの何百倍もの大きさで、彼女を想っている。
だから、「なんで?」と聞くと。
彼女は少し黙った後、震える声を出した。その声に、涙が混ざる。
「だって、じゃあなんで何もしてくれないの?
なんで……一度も好きって言ってくれないの……?
付き合って、二ヶ月も経つのに……」