*短編集* 『 - 雨 - 』
晴人が茶化したあの告白を笑って許せるかって言われたら、答えはノーかもしれない。
私だって、死ぬ気で頑張ったんだから。
死ぬほど悲しかったんだから。
でも……晴人がずっと悩んでくれたのはきっと本当だし、その年月を思えば……もう時効だと思えてきて。
結局私は晴人に甘いんだなと笑みがこぼれた。
好きだから……だから。
「言いたい事は、これだけ?」
『ごめん』の紙切れをぴらぴらしながら聞くと、晴人は少し驚いた顔をした後、「いや……」と首を振る。
そして、真面目な顔をして私を見つめた後。
「好きだ」
落ち着いた声で、そう告げた。
「これは、自分の口で言おうと思ってたんだ。だから、書かなかった」
晴人の真剣な瞳に、じわりと涙が浮かんでくる。
六年前……ううん。もっと前から欲しかった言葉と表情に、嬉しさで胸がきゅっと締め付けられた。
「だけど、山口さんには、私にしかひどい事言わないみたいな事言ってたじゃない」
「は? 山口さん……? ああ、あれは、お前だけ特別って意味で……なんで伝わんねーかな」
そう苦笑いする晴人に、六年前告白した時の晴人が重なる。
練習台にするなよって、苦笑いを浮かべた時の晴人が。
だけど。
今回の結末はあの時とは違う。