*短編集* 『 - 雨 - 』


美織と出逢ってから毎日降り続く雨が、今日も空から落ちていた。
毎日空から舞い落ちてくる滴が伝えようとしている事は、一体なんなのか。

「親に内緒で俺の部屋にきて……悪い娘だな」
「一度、刃向ってみたかったからワクワクしてるわ」
「……その一度で、人生棒に振る事になっても、ワクワクしてられるか?」

わざとした、意地の悪い質問。

出逢ってたった一週間。
いくらふたりが運命的なものを直感で感じていようとも、美織は俺に対して絶対的な信頼は置いていないハズだ。
傍にいてしっくりくるものはあるけれど、相手の事を知るには時間が足りな過ぎる。

俺は美織を手にする事で失うものなんかひとつもないけれど。
美織は違う。

でも、俺はもうこのまま帰してやるなんて事、できないから。

「心配すんな。嫌になったらおまえは俺から逃げ出して、家に帰ればいい。
俺が無理やりした事でおまえはただ捕まえられてただけだって、悪者は俺だって、そう説明すれば――」

不意に目の前が真っ暗になり、次の瞬間には美織の唇が俺のそれを塞いでいた。
ぶつかるように、咬みつくようにされたキスに戸惑う俺を、美織が真っ直ぐな瞳で見上げる。


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