*短編集* 『 - 雨 - 』
「俺が浮気相手になってやろうか」
急にそんな事を言い出した風間を、ポカンとして見つめる。
多分、顔なんて涙でべちゃべちゃだし風間が急に変な事言うからよほど間抜けな顔をしていたハズなのに。
いつもそれを目ざとく発見しからかう風間は、真面目な顔をしたまま私を見ていた。
今日、私が風間の部屋にきたのは、恋人である祥太の愚痴を聞いてもらうためだった。
社内どころか、社外でも人気の高い風間相手に彼氏の愚痴だなんて、風間に片思い中の誰かが知ったら発狂しそうだけれど。
私と風間は大学の頃からこんな感じだし、今更この関係を変えるつもりもない。
祥太が浮気をする度に愚痴を聞いてもらうのは、もう何度となく繰り返している事。
つまり、祥太の浮気は一度や二度じゃないって事だ。
そんな祥太の今回の浮気が発覚したのは、二週間前。
他の女の子と腕を組んで歩いているところにばったり出くわしてしまった。
まぁ……こういうのもアレだけれど。
学生時代から付き合い続けている祥太の浮気はもう日常茶飯事とまではいかなくとも、そんな感じで。
人当たりのいい祥太はモテて人気もあるから、告白なんかもよくされてて。
その度、人のいい祥太は上手く断る事ができずに「一度でいいから……っ」なんて言う女の子の要望に結局応えてしまうというのがいつものお決まりのパターンだ。