*短編集* 『 - 雨 - 』



本当に毎度の事だ。……でも、何度繰り返されても慣れはしないもので。

決して祥太から浮気をしに行っているわけじゃないのは、私も分かってる。
祥太のその、人の良さや人当たりのよさに惹かれて好きになったんだから。私だって分かってる。祥太がわざとしているわけじゃないんだって。
心からの善意で、優しさとして女の子の気持ちに応えているだけなんだって。

……けれど。

祥太からしたら、優しさから、告白してきてくれた女の子の言う事を聞いているんだろうけど。
それが私を傷つけるって事までは頭が回らないのだろうかといつも思う。

ただ、謝り通して「本当に好きなのは実莉だけだから!」って頭を下げる祥太を、仕方ないなって許す私が、ちっとも傷ついていないとでも思ってるんだろうか。

本当は、告白してきた子への優しさなんて見たくなくて。私だけに優しくして欲しいなんて思ってるって事を、祥太はきっと気づいていない。


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