*短編集* 『 - 雨 - 』
窓に打ち付ける雨の音が、部屋に響く。
すぐには意味が分からなかった。泣いて頭がぼんやりしているせいもあったのだと思う。
私が動揺し始めたのは風間の言葉を聞いて十秒以上が経った頃だった。
私が言葉の意味を理解したタイミングを見計らっていたのか、思わず顔をしかめたところで風間がもう一度繰り返した。
「浮気相手になってやるよ」
「浮気相手って……」
「浮気して祥太と同じ立場になってまで、別れたくねーって気持ちが俺には分からないけど。
それでおまえの気持ちが楽になるんなら、協力してやるよ」
まさかの申し出に驚いている私に、風間が続ける。
「俺の事好きじゃなくていい。祥太と別れなくてもいい。
実莉にとっては悪い話じゃないだろ。
俺が浮気相手に成り下がるなんて、俺に言い寄ってきてる女が知ったら発狂しそうだけどな」
本当にその通りだと、一瞬にして顔を青ざめさせた私を風間が笑う。
そして。
「言うわけねーだろ、そんな事。
浮気相手になったなんて、俺にとっても得する話じゃねーし」
そう苦笑しながら、私を押し倒した。