*短編集* 『 - 雨 - 』
告白をしなかったのは、長すぎた友達関係が原因だと言えばそうかもしれない。
築いてきた関係を、告白ひとつで壊してしまうなんて事が耐えられなかった。
だから最初は、振られて黒田との時間を全部なくしちゃうくらいだったら、告白なんてしなくてもいいと思った。
友達としての黒田でいいからずっと一緒にいたいって。
だけど……そんなのはやっぱり続かなくて。やっぱり……恋人としての黒田が欲しくなってしまって。
そんな気持ちを抑える事に、もう限界だった。
恋を知った心が、友達なんていう関係で納得できるハズがなかったんだ。
うまくいかないって決めつけるなんて馬鹿げているのかもしれない。
けれど……分かるから。
黒田が何を考えているかくらい、手に取るように。分かる。
だって、十年も隣にいたんだもの。黒田が私との事をどう考えているかくらい、お見通しだ。
今のままの関係を望んでいるんだって事くらい……。
黒田は、どこか抜けていてそこが憎めない男だけど。
たったひとつ、最後まで抜け目なかった部分があった。
それが、私との距離感だ。
絶対に期待させないような、そんな距離を一度だってはみ出した事なんてない。
少なくとも、私が黒田を好きになってからは一度も。