。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
あたしが戒の元へ走っていくと、戒が驚いたように目を開き、キョウスケは立ち止まって、ただじっとあたしの様子を見据えていた。
「ごめんね、キョウスケ……」
キョウスケの方を振り返って言いかけると
「別に。いいですよ。選択するのはお嬢ですから」
とちょっと物悲しそうに笑みを浮かべ目を細める。
「いや、でも……」
と戒は渋っていたけれど
「一緒に行く!」
とあたしが勢い込むと、
「……う…うん」
と根負けしたのか、まだ驚きを隠せないままぎこちなく頷く戒。
「んじゃ響輔、そっち頼むワ。俺らドクターの方調べてくる」
戒は軽く手を挙げキョウスケを目配せ。
キョウスケも返事のつもりなのか同じように軽く手を挙げ、今度こそ振り向かずタイガの車へ向かっていく。
残されたあたしは
「ほんじゃ行くか」
戒に手を握られて、
「うん!」
そのあったかい手のひらの感触を必死になって感じ取るように
大きく頷いて歩き出した。
コンクリートの影も同じ方向へ移動していく。
その影を見るだけでも今は何故だか
安心できた。