。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
この睡眠薬は鴇田に頼んでドクターからもらったものだ。
「自分で行けばいいじゃねぇか。わざわざ俺を介さなくてもそっちの方が手っ取り早いんじゃねぇか?俺はお前のパシリじゃねぇんだぞ」
鴇田はさも面倒だと言わんばかりに煙をふぅーと大きく吐いた。
「ちょっとぐらいいいじゃない。それにこないだの食事会以来何かアイツのこと嫌いになった。今は会いたくないの」
「何かって何かあったのか?」
目を細めて鴇田が聞いてきて
「別に特に何も。でも知ったかしてお説教されたからムカついてさ」
「衛はいつもああゆう感じだ。妙に悟ったところがあるからな。
それよりも眠れないのはもしかして―――あの食事会以来……ずっと……か?」
鴇田が眉間に皺を寄せて、珍しく探るように立ったままのあたしを見上げている。
「違うわよ。眠れない原因はあんたが結婚するから、とかじゃない。
あのときはちょっと酔っぱらってただけだし、『パパを取らないで』なんて口が裂けても言えないわ」
ちょっと肩をすくめて見せると、鴇田は少しほっとしたように肩の力を抜いた。
「結婚―――してもいいのか?」
「結婚しちゃいけない理由がない」
そっけなく言ってまたも肩をすくめる。
「わざわざ娘にお伺い立てる程、あの人と結婚したいんだ。それだけあの人のこと好きなの?
それとも丸くなっただけ?」
ちょっと興味本位で聞いてみると
「さぁな」
と今度は鴇田の方がそっけなく答えて肩をすくめて見せた。
いけ好かないヤツ。やっぱこいつ嫌い。