。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
「昨夜龍崎組のお嬢さんが運ばれてきまして、それでバタバタで家に帰れなくてね」
ドクターはアヤメさんに説明をしている。
すみませんねぇ、二人の甘い(?)時間を邪魔しちまって。
と、あたしは嫌味たっぷり、心の中で呟いた。
てか何でここに来る!
早く立ち去れよ!!
と焦りだけが募る。
けれど二人はあたしの焦りとは反対にのんびり…大人の余裕ってのか?会話を繰り出しながらゆっくりとこちらに向かってくる。
「まぁ。朔羅ちゃんが?」
「ええ。軽い日射病だったので大丈夫ですけどね」
「それは良かった」
ドクターとアヤメさん…二人の会話と足音がこちらに近づいてきて
バッ!
あたしたちは逃げることもできずに思わずその場に…車の影へ身をひそめた。
てか逃げようと思ったら戒に引き止められた、ってのが正しいのか。
「あの二人、めちゃ怪しい」
てのが戒の意見だったけれど―――
怪しいのはあたしたちの方だっつうの!!
それでも戒に従って大人しくその場で屈んでいると
ドクターたちの足音がすぐ近くで聞こえて、後部座席のドアを開ける音が聞こえてきた。
「あれ?」
後部座席の扉を開けようとして、ドクターの訝しむ声が聞こえてきた。
ドキリ!
心臓が鳴ってあたしが目を開いていると
『しー…静かに!』
って意味で戒は唇に指を当て、あたしの頭を押さえる。
「開いてたみたいです。閉め忘れかな」
とちょっと恥ずかしそうに笑う声が。
「不用心ですわよ」
とアヤメさんのたしなめる声も。
どうやら二人はあたしたちの姿に気づいてないみたいだ。
ほっ
「そうですね。まぁ盗まれて困るものもないので大丈夫ですが」
見られちゃ困るもんはあるだろうが。
例えばこの粉とか―――
慌て過ぎていて思わず持ってきちまった。あたしは手の中の小麦粉(?)を握りながらドキドキ。