。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
バーを出ると、立派なエレベーターが六機、連なっている。
大理石の床に金色の枠のエレベーター。悪趣味じゃない程度に上品なのは、さすがと言うべきかしら。
左右に三機ずつ並んでいるエレベーターの全部のボタンで『降』ボタンを連打した。
どれが一番早く到着するか、苛立った様子で六機のエレベーターを凝視していると、そのうちの一機がホールに到着のサイレンを鳴らした。
重そうな扉が開き、そこには誰も乗っていなかった。
あたしは足早にそのエレベーターに乗り込み、扉の『閉』ボタンをまたも連打した。
一刻も早くこの場を立ち去りたい一心だった。
扉が音も無く静かに閉まる。
真の静寂が訪れ、ほっと一息ついていたときだった。
ガッ!
両開きの扉が閉まる寸前、その扉の隙間に両手を差し込んで強引にこじ開ける何者かが侵入してきてあたしは息を呑んだ。
確かめる程でもなく、それは玄蛇で―――
追ってきた玄蛇は珍しく余裕のない様子で息を切らして項垂れ、箱の中に入ってきた。