。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
この世にたった一人………
あいつを守ってあいつを幸せにしてやれるのは―――
俺だけ――――………?
俺が顔を上げると、響輔の切なそうな…苦しそうな無理やり浮かべた笑顔が目に入った。
「悔しいですけどね…
お嬢を悲しませるのも、お嬢を笑顔にできるのも―――あなたしかいないんです」
響輔の俺の腕を掴んでいた手がゆっくりと離れる。
代わりに俺の手に小さなシルバー製のペンダントトップを握らせて、響輔はうっすらと涼しく笑った。
「アクセとか柄にもないですけど、これ―――
GPSです。俺と戒さんの―――
何かあったら互いの位置をこれで確認しましょう。ケータイに位置情報を送っておきました」
何かあったら―――……?
俺は手のひらのペンダントトップを改めて見下ろして、それをぎゅっと握った。
「一結とは新宿でショッピングして、その後映画を見て、夕食を食べてくる予定です」
響輔の説明に、俺はぎこちなく笑顔を浮かべるのが精一杯。
「何や、お前……ちゃんと計画立ててるやんか……さっきは無計画みたいなこと言うてたのに。
しかも普通の女が喜びそうなコースやし」
“あの”女狐イチが並のデートコースではしゃぐ姿とか、想像できねぇけど。
「普通の女―――で居てほしいんです、一結には」
響輔が浮かべていたのはぎこちない笑顔やなく、今度こそほんまもんの
笑顔に見えた。