。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
「戒……どうしたの…?」
恥ずかしさを紛らわせるために聞くと
「俺の我儘聞いてもろてええ?」とちっちゃな声が頭上から降ってきた。
「うん?」
戒が我儘言うなんてめずらしー………
何だろ……
「少しの間……このまま、こうしていたい」
きゅっと頭を抱き寄せられ、髪の中に戒の手が入ってくる。
「いいよ」とは答えなかった。
だってホントはあたしもこうして、抱きしめられたかったから―――
噂話をしていた彼女たちには誰もが羨ましがる理想のカップル―――と言う風に映ったろうか。
でも
本当はこの瞬間ですら、戒にとっては………ううん、二人にとってはとても危険なことで
それでもこのぬくもりを手放すことは
できなかった。
それを知るのはもっともっと
後のこと。