。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
――――……
「………ら…朔羅!」
揺り動かされて、はっと目を開くと目の前に超絶整った顔の戒のドアップが!
ぅわぁ!!
思わず飛び上がりそうになった。戒は苦笑い。
「着いたって。お前全然起きねーし、このままバスで一日が終わるかと思ったけど~」
戒は笑いながらも唇を尖らせている。
へっ!?着いた!?
キョロキョロと辺りを見渡すと、行きはあんなにカップルやら学生たちやらで賑わっていた車内はあたしたち以外誰一人としていなかったし、バスの窓からこれまたメルヘンチックなMIRACLEランドの白い塀が見えて、そこから賑やかな声が漏れ聞こえてきた。
恥ずかしいのやら、嬉しいのやら複雑な気分でバスを降りたけど、目の前にMIRACLEランドの白、ピンク、イエロー、淡いブルーのパステルカラーを基調としたまるでキャンディーのようなゲートを見つけるとテンションはマックス!↑↑
バスの中で眠りこけて恥ずかしかったのはどこへやら。
「可愛い!!☆」
しかもランドの入口にふわふわピンクのうさぎちゃんミラビ(※)発見!
(※ミラビ:MIRACLEラビットの略です。MIRACLEランドのキャラクター♪)
「戒!ミラビと一緒に写真撮ろう!」あたしはバッグからケータイを取り出したが
「待てよ。こっちの方がきれいに撮れると思って響ちゃんから奪って……いや、借りてきた」
戒は弁当の入った紙袋をごそごそさせるとタブレット端末を取り出した。
準備がいいな……とぽかんとしていると
「ほら、早くしねぇとミラ……ビ??って言うあのうさぎいっちまうぜ?」
あたしの手を取り走り出す戒。
いつだったか、こんな風に二人して走ったことがある。
『逃げンぞ』
あ、そうだ……あれは…二か月ほど前、あたしがまだこいつのこと好きとかそんなんじゃないとき、戒はあたしの手を引いて補導員から逃げ出したんだ。
こいつは―――いつもあたしを守ってくれる。
この手で、この脚で。体全部で―――
あたしを幸せにしてくれる。
早く……
―――早く
手を伸ばそう。一歩を踏み出そう。
幸せを掴むんだ。
戒の背中がそう語っているように思えた。