。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。

響輔が手を差し伸べる瞬間、鴇田は床に放り投げられた拳銃を手にしようとしたが、またも響輔の方が一歩早かった。


絨毯の上に落ちた拳銃を足で払い、その拳銃はベッド下へと滑っていった。


「一結、その場を離れんといて。危険やから」響輔が言い、あたしは震えながらサイドボードの影に隠れるように身を縮ませた。


ベッドを挟んで、再び響輔と鴇田が睨み合う。両者はまるで大きな羽根を広げて威嚇し合う鳥のように見えた。


どれぐらいそうやって対峙していただろう。


やがて、攻撃を仕掛けたのは鴇田の方だった。


「もう一度聞く、イチに何をしようとしていた!」


素早い動作でひらりとベッドを飛び越え、響輔に向かって殴りかかろうとしていたが、その驚異的なスピードを響輔がギリギリのラインで交わした。


そして、後ろを向く形になった鴇田の腕を捻りあげ、背中に膝蹴りを埋めると


「ぐっ!」


鴇田は呻いて、その場に手をつき、だがすぐに態勢を立て直して、近くに置いてあった灰皿に手を伸ばすとこれまた素早い動作で振りあげる。


またもそれを寸でのところで響輔はかわし、



「なら、言わさせてもらうけどな!


あんたが……!」




壁にぶち当たったガラスの灰皿は粉々に砕け散った。あたしは呆然とその粉砕された灰皿を見て、鴇田の攻撃力が相当なものだと思った。


鴇田―――……本気だ。


「俺が何だ!お前に何をした!」


鴇田は今度は長いステンレスバーで支えてあるシェードランプに手を掛けると、横に振りかざした。響輔はその攻撃に、瞬時に腰を落として再び避けると、壁に当たったシェードランプの傘の部分はひしゃげて、中のランプが壊れたのだろう、パラパラと繊細なガラスの破片が床に落ちる。


「止めて!響輔は何もしてない!」


あたしはサイドボードの影から飛び出し、再びシェードランプの柄を握って攻撃しようとしている鴇田の腕に縋り叫んだ。



「退け!イチ!」

「一結、下がっとりぃ!!」




二人の声が重なった瞬間、鴇田はあたしの制止を乱暴に振りきり、割れたガラスの先がキラリと妖しく光るランプの柄を、


響輔の首元に真横に走らせ、両腕で響輔の反撃を阻止した。





響輔―――!






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