。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
あたしたちの前に先客が居たのだろうか。その客が迷ってる……と考えたが、その動きの早さからして、普通の人間とは思えなかった。
かと言って動物の類でもない。
その影は大きくて、ほんの一瞬見えたが、ひとの形をしていた。
「誰!」
あたしは声を張り上げた。
黒い影はあたしの狼狽を愉しむかのように、鏡の中を素早い動きで移動している。
「誰なんだよ!出てこい!」
あたしが尚も怒鳴ると
「ここだよ」
あたしのすぐ背後で低い男の声が聞こえた。
もちろん戒の声じゃない。
目の前の鏡を見ると、あたしと、あたしの背後に居る黒い人影が映しだされていた。
その手には
ハジキーーー!?
男はあたしのこめかみにハジキの銃口を当て、どこか愉しそうに
「後ろの正面
だぁれ」
と、低く呟いた。