。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
朔羅とすぐ合流するつもりだったし、あいつの怖がりの性格からすると、すぐ近くで俺の登場を待ってるかと思っていた。
けれど朔羅は居ない。
「あれ?」
辺りを見渡すと、一面鏡張りの通路があちこち広がっているだけだ。
「どこへ行ったんだ、あいつ」
思わず頭の後ろに手をやり辺りを見渡して―――気づいた。
あいつ……
朔羅の香りがしない―――
ここはミラーハウスだ。つまり鏡の迷路になってるってことだろう。
さっきちらりと見た建物面積はそれほど大きなものではなかった。
と言うことは迷路は複雑かもしれないが、誰かがどこかですれ違う可能性だってある。
なのに人の気配一つしない。
―――おかしい
ふいにイチの言葉が蘇る。
『スネークは杉並区の焼死体の犯人を知っている。あいつはその存在を―――
鏡
と例えていた』
鏡――――
嫌な予感がして俺はあちこちを見渡した。
全ての五感をフルで研ぎ澄ませたが、そのどれもが制御を失い、やがて完全に壊れたように、何も感じられない。
朔羅…
「朔羅―――!」
俺が叫ぶと同時、遠くの方で何かが壊れる音がかすかに聞こえてきた。