。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
俺は缶コーヒーに一口口を付けると唇の端でうっすら笑った。
「十九の小娘にしてやられたか。お前らしくない。
でも
イチは手ごわかったろ?あれの性格は完全に父親似だな。
芯が強くてブレない」
タチバナはまたも肩をすくめてみせ
「必要ならばyouの身柄を渡してもらってこちらで保護することも可能だが?
あのままスネークと繋がっているのは危険じゃないか」
―――スネークとイチが繋がっている。
そう気づいたのは早い段階だった。
イチが俺たちの破滅を願っていると気づいてから―――だ。
この病院で鴇田と朔羅、戒と響輔が狙撃されたのがいい例だ。
イチの復讐心を利用して、その執念に乗じて俺たちを一気に葬り去ろうとしている。
だが、たかだかイチ一人―――最強の殺し屋と謳われたあの殺し屋が、小娘の命令だけで動くとは到底思えない。
スネークはイチを利用しているだけでバッグに何かとてつもなく大きな陰謀が渦巻いているんじゃないか。
そんな気がしてならない。
俺の考えを口に出すと、タチバナは余裕の表情から一転、ほんの少しだけ目を細めて腕を組む。
「スネークとの“契約”がある限り、イチの安全は保障されるはずだ。
それよりもあの女を泳がせてこちらから探りを入れる方が手っ取り早い」
「十九の小娘を利用する?」
タチバナはコーヒーを一飲みして面白そうに笑った。
「現に利用できただろ?お前の前では『知らぬ存ぜぬ』で通せても、
果たしてそれがいつまで持つかな?」
俺もにやりと笑うと
「心理戦か。お前って結構陰険なんだな」
とタチバナは妙なところで感心。
「詰め寄ったのはお前だ?俺は何もしてねぇ。それに作戦を考えたのは彩芽だぜ?」
俺の言葉にタチバナは顔を歪めながら、またも肩をすくめる。
「女は怖いね」
同感だな。