。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



ランドから駅までの直行便バスで帰り、そこから電車を乗り継いで御園医院に着いたのは19時を回っていた。


御園医院は相変わらず賑やかな(煩いとも言う)だったが、いつも以上に緊張感があちこちで走っていた。


医師も看護師も誰もがバタバタと横切っていたし、受付でDr.鴇田を呼んでもらうつもりが


「申し訳ございません。鴇田は今救急患者の対応に追われてまして」と言われ、


救急……?


まぁこの世界どこで何があるか分かんねぇからな、それも有り得るけど、でもドクター鴇田が出張ってるってことは相当大物に違いねぇ。


俺は一瞬、その『救急患者』ってのが気になったが、朔羅の怪我のことを説明すると


外科を案内された。まぁ普通に考えりゃ外科だけどな、ドクターは変人だけど腕は確かだから、あいつに診てもらうのが一番だったが。


「戒、ここで大丈夫。誰かに見られたらマズいだろ?


あたし一人で大丈夫!すぐマサも呼ぶから」


と朔羅は言ったが、俺は心配だった。


「だぁいじょぅぶだってぇ!!こんな怪我ぐらい、消毒液塗って絆創膏貼って終わりだ」


と拳を握る。


「帰りはマサと帰るから、万が一鉢合わせたら大変だろ?今度こそ言い訳できねぇし」


と朔羅は苦笑い。


でも―――


ここはスネークの息が掛かっている場所かもしれない。


まだドクターがスネークだと言う疑いも残っている。或いはタイガの野郎が嗅ぎつけるかもしれない。そのどちらでもない可能性があるが


ドクターの点滴をすり替えたのはスネークだ。ヤツは容易く侵入できたと言うことが不安を煽る。


朔羅は「大丈夫」と言い張ったが、


マサさんに俺らの関係がバレるより、スネークに何かされたら、と思うとやっぱりバレた方がまだマシだと思った。


もうひとときも目を離したくない。


そんな想いで、朔羅の手をきゅっと握っていると




「お待たせいたしました。


外科病棟のツシマです」




と、白衣を着たスラリと高い医師が現れ、


「―――え?」


俺は目をまばたいた。


「受付から聞きました。お怪我をされたようで」と“医者”は言い、朔羅を処置室へと促す。


「戒、大丈夫だから!また後で」と朔羅はその医者に促されるまま


俺も今度は引き止めなかった。






“お前”


何でここに居んねん。





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