。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



採血管2本分の血液を取り終えると、次は軽く下瞼を下げられ瞳孔なんかのチェックをして、


最後に口の中に綿棒のようなものを入れてきて、


「はい、終わりですよ」


と言われて


「ありがとうございました」


と礼を述べた。正直、この検査がどうゆう検査なのか分からなかったが、


ま、医者のやることだから意味のあることなんだろう、と解釈することにした。


「いえいえ、お大事に。検査結果は郵送いたします」


もう一度「ありがとうございました」と礼を述べ


診察室を出ると、長椅子にマサが任侠座りで待っていて、その姿はさながらでっかい熊が獲物を狙っている様に見えた。


「お嬢!大丈夫ですかぃ!」と勢い込まれて、


「怖ぇえよ、お前」


あたしは思わずマサを睨んだ。


「大丈夫、さっきも言ったけどちょっと怪我しただけだから」とあたしは先生が巻いてくれた包帯の部分を指さし。


「そうですかぃ。じゃぁ帰りやしょう」


と言って立ち上がったが、ここに来て


「あ、しまった!ミラビ診察室に置いてきちゃった!」


あたしは戒が買ってきてくれたミラビのぬいぐるみが手元に無いことに気づいた。


てか、彼氏が買ってくれた大事なぬいぐるみを置いてくるかな、普通。と自分に突っ込む。


「み……ミラ……?」


マサが難しい顔を作って、てかお前悩むときも怖ぇえんだよ。普通にできないのか、普通に。


「MIRACLEラビットの略だよ。あの、えっと……リコが!


お姉さんと行ったって言ったから貰ったの!」


あ、ぶっねーーーー!!!


思わず戒とデートに言ったときに買ってもらったって言っちまうところだった。


慌てて言い訳したけれど、マサは


「ミラ……ミ…」とまだ悩んでいる。


そんなマサを放置して



コンコン


扉をノックしても中から返事がない。


あれ??カルテでも書いてて気づかないのかな。


でも、まぁあたしの後に入った患者は居ないから大丈夫だろ。


引き戸を開けると、ふわりと風が漂ってきた。


その風がふわりとさっき嗅いだ先生の香りを運んできた。


思わず目をしかめると、窓は開いていて白いカーテンがはためいている。




先生は―――



居なかった。





診察の際、ドクターが腰掛ける椅子に白衣だけが残っている。


え――――……!!?





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