。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
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「は!?自殺未遂!?
あの女狐が!!?」
俺はあれから数分後、何とか落ち着いた響輔からとつとつと語られる言葉に耳を貸した。
今は処置室の前の長椅子に二人並んで腰掛けている。
それまでのいきさつをかいつまんで聞かせてもらったが
響輔は本気でイチと付き合おうとした。
本気であの女狐と向き合おうとしていた―――
あの女狐が自殺未遂とかそっちも信じられんけど、響輔が本気で女狐を選んだのがもっと信じられなかった。
「何で……?お前……朔羅のこと……もう諦めたんか…?」
と、聞いた言葉は思いのほか弱々しかった。
本来の俺なら「ラッキー!これでライバルが一人減った!」ぐらいに思うが、そのライバルが
“響輔”
だから、素直に喜べない。
俺は響輔の気持ちを痛い程―――知っていたから。
響輔は俯いたまま額に手を置き、
「何でなんやろ……
自分でもよぅ分からへんのです。
でも
一結は愛情に飢えた女や。
誰にも愛されず、ずっと―――
孤独やったんや」
響輔の語られた内容に、
『それは同情じゃないのか?』
とは聞けなかった。
イチの自殺未遂でここまで動揺して、泣いている響輔には、
言えなかった―――
「ほんで、何でお前のせいなん?
イチはお前に惚れてるんやろ―――?
お前がフって自殺未遂なら分かるんやけど」