。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
俺の言葉にタイガがゆっくり……ゆっくりと、振り返った。
まるで蛇が鎌首をもたげるように。
その顔にはもう余裕の笑顔が
浮かんでいなかった。
それは俺がはじめて見るタイガの
怒気
だ。
眉間に深く皺を寄せ、切れ長の眼の奥で底知れない怒りが渦巻いている。
今までどこに隠していたのか、と問いたいぐらい全身から殺気を出し、ピリピリと静電気のようなものがこいつを包んでいた。
「どこでその名を?」
タイガが、もはや笑顔も浮かべず切れ長の目を鋭くさせて、同じだけ鋭い口調で聞いてきた。
その黒い眼の中で一瞬だけ、赤い光を見た。
ビンゴかよ。
やはり切り札だったか。
俺たちが推測した考えは当たっていたワケだ。
ちっ。
そうと分かってりゃ、こんな早く手札を見せるんじゃなかったぜ。
だけど
カードを先に出したのは俺だ。
―――勝負してやるよ。
俺は拳を構えた。
「どうやら君を黙らせる必要があるようだね」
タイガも拳を構え、
「やれるもんならやってみな」
俺も挑発した。
両者が睨みあったまま、互いの間合いを測るように距離を詰めた。
先に仕掛けてきたのはタイガだった。
龍崎 琢磨並のスピードと威力のフックが飛んできたが、俺は寸ででそれを避けると
右脚でタイガの脇腹めがけてキックを放った。さっきとは違う、本気の蹴りをな!
だが、タイガはひらりとそれをかわし、俺の間合いに入ってくると、今度はタイガのキックが踵落としの要領で俺の顔めがけて飛んでくる。
再びそれを避ける羽目になったが、相当なスピードだ。
一瞬の油断も許されない。