。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
再び拳を構え、今度は俺の方がタイガの顎に向かって殴りかかった。タイガはそれを避けようとしたが、一瞬の差で俺の拳の方が早かった。
的は外したがタイガの肩にぶつかり、タイガがよろけると、次の打破を与えないため、今度はタイガの両肩を掴み
「ぉらぁ!!!」
みぞおちに一発、強烈なのをお見舞いしてやった。
げほっごほっ!
タイガが一瞬だけ怯み、しかし
「相変わらずいい“あんよ”だね、ヒツジちゃん」とにやりと笑いながら、みぞおちに埋まった俺の脚を掴んで、今度は俺が壁に叩き付けらる番になった。
タイガは俺の攻撃にそれ程ダメージを受けていない。
流石だぜ。
バンっ!と派手な音を立てて壁に背を打ち付けられ
「ってぇな!!」俺が怒鳴ると
「さっきのお返しだよ」とタイガはあくまで冷静だ。
タイガの強烈なひじ打ちが俺の腹を打ち、俺のパンチは寸での所で体を沈めて、避けられる。
俺の後ろに回り込んだタイガが、俺の腕を掴み上げ、それと同時に首の後ろも抑えられる。
腕を捻りあげられ、しかも首の後ろも抑えられている。唯一動かせるの脚だけだったが、それよいも早くタイガが俺の脚を足払いして、俺は床に膝をつく形になった。
くっそ!
「大人を舐めちゃいけないな」と
タイガが俺の耳元でぞっとするような優しい声音で囁く。
圧倒的に不利な状態だ。
タイガは今すぐに俺の首の骨を折って殺すことも可能だ。だが、すぐにはそうするつもりはないらしい。
まるで獲物をいたぶるように、
残酷に―――
愉しんでいるのだろう。
絶対絶命、だと思ったが
その瞬間、天井から黒い影が、音もなく下りてきて、ひらり、と白い裾が舞った。
白い裾とは言うまでもなくドクターたちが羽織る白衣で。
「ここは病院やで。
静かにせぇ言われへんかったん?」