。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
「なる程ね、名前は?医者だったら何らかの医師会に登録してあるだろう。探りを入れるが?ガキ共がその医者に頼んだ内容は?」とタチバナがまたもせっかちに質問してきて
「名前や内容まで“聞き取れなかった”ようだ。ただ、医者には違いない」
今度こそ、俺は『お手上げ』ポーズ。
「何だよ、中途半端だなー」とタチバナは短く「ちっ」と舌打ちして
「ま、いいや。俺らにとってそいつらは害がないんだろ?白虎の子飼いだからな」
「100%とは言い切れん。まだ完全に盃が交わされたわけではないから」
俺の答えにタチバナは小さく唸り、グラスを額に当てた。
「どっこもかしこも隠し事だらけだな。クリーンな所はないんか」と苛立ったように前髪を掻き揚げる。
「ヤクザにクリーンを求めるお前がバカげてる。かく言うお前ンところも“完全なるクリーン”とは言えんだろう」
「…そうだな」
タチバナは妙な納得をして、
「ひとまず、Tのことは鴇田に探らせる。白虎のガキたちも気づいたみたいだからな、急がねばならない。
あとは白虎のガキ共がその“隠し玉の医者”に何を頼んだか、と言うことだな」
俺は小さく吐息をつくと透明だったグラスが俺の呼気で僅かに曇った。