。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。




俺の問いかけに、


「は―――……?」


タチバナは奇異なものを見る目付きで俺を見下ろし、


「ついさっき、キリが結婚を取りやめるかどうかで悩んでいた。俺はいいアドバイスができなかった。経験がないことだからな」


「キリってあの危険なオンナか?」


「色んな意味で最強だ」ふん、と言ってやると


「最強?まぁいかにもデキそうな秘書だもんな。お前んとこ秘書の入れ替わりが激しいが、あの女は長く続いてる。やり手なんだろうな」


「お前の嫁もやり手だろ?お前より会社を愛しちゃってるぐれぇだからな」と言ってやると


「それを言うな!」


ドン!


タチバナはグラスをデスクに乱暴に置いた。


「まぁ俺の嫁のことはおいといて~」とタチバナは両手をスライドさせる。


「最強てのはあれか?スネークの妹だから、相当強いのか?そうには見えなかったが。


限りなくカタギ近くに見えたが」


「まぁお前が言う通り限りなくカタギに近いがな。俺が言うのは


ベッドでは最強、って意味だ」


「………」


俺の言葉にタチバナは沈黙して鼻元を押さえる。


無言でティッシュボックスを差し出すと、


「鼻血は出てない。……てかお前が何で知ってる。


は!もしやお前、あの女とヤっ…」


「てねぇ。でも何となく分かる。“あの”鴇田が魂抜かれたように出社してくるときが度々あって、同じタイミングでキリは肌がつやつや。5歳ぐらい若返ったように見える」


「すげぇな!あの鴇田をそこまでできる女って!


俺も一晩……と言いたいところだが、俺は嫁一筋だからな」


とタチバナは軽~く、手を挙げる。


「あそ」


「まぁ?オンナは(色んな意味で)強し、ってことだよな。彩芽さんと言い、あの女優のyouと言い、お前んところの朔羅もそうだろ?


気を付けろよ?オンナを舐めてると痛い目見るぞ?」タチバナはニヤリと不敵に笑う。


「別に舐めてなどない。だけど、何でそんなこと言うんだ?まるで経験してきた物言い」


「………」


タチバナはまたも無言で、ただ掌をわなわなと震えさせている。


イタイ目に遭ったと見える。


「あんの女郎蜘蛛!!!俺の完璧な戸籍に唯一、泥を塗りやがって!!」


女郎蜘蛛??


完璧な戸籍って何だよ。と突っ込みたかったが、


ふむ、なるほど。




戸籍―――ね。




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