。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



先輩と二人改札をくぐり、何となく電光掲示板で次の電車がいつ来るのか確認をした。


次の電車は3分後か……


ゆっくり行っても十分間に合う。


と考えながら視線を戻すと、駅の柱に『花火大会』のポスターが張られていたのを見て


花火大会……


響輔さんと行ったな。


あのとき、あたし鼻緒摩れしちゃって、響輔さんが絆創膏を貼ってくれたんだっけ。


その後、人ごみの中、押されるようにして会場で見上げた花火。


響輔さんはあたしがもみくちゃにされないよう、気を遣ってくれた。守ってくれた。


朔羅の友達だから―――そんな理由でも、一緒に居られて嬉しかった。


楽しかった。


―――幸せだった。


またあたしの目から涙がこぼれた。


ヤバイ、あたし今日、涙腺壊れたかも……


思わず立ち止まって柱を見ていたあたしに気づいた先輩が振り返り


花火大会のポスターを目に入れると、ちょっと考えるように首を捻り


あたしの手を取ると


突如走り出した。


ぇ!え!


吊られてあたしも走ることになる。先輩はあたしの足に合わせてくれたと思うケド、あたしたちは、あたしの帰る方の電車ではなく、運良く来た反対側の電車に滑り込む形になった。


電車の扉は閉まり、せっかちに走り出す。


へ!?


「先輩……あたしの家、逆方向ですけど」


と、走り出した電車の黒い地下道……流れる灰色の景色を指さすと


「知ってる。


今日はサ、リコちゃんが今までやったことないことしようぜ。


んで、思いっきり楽しもうぜ」




は―――!?




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