。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
「うちが掴んだ情報はそこまでや。うち、あんたらと違って暇やないんや~
ほな」
と心は小さくなったタバコを灰皿に押し付け、白衣を翻し建物の中に入って行こうとする。
「どこへ行くん。ここは青龍の縄張りやで。お前も早よ退散しぃ」
「分かっとるわ。うちらが何の為に“フリーランス”語っとるか分かってるやろ?
全国どこにでも行く
“暴れ馬”
やさかい、身軽なんや。
退散する前にこの白衣返さなな」
変な所、律儀だぜ。変人なのに。
「偽医者め」と俺が目を細めると
「阿保ぅ、医師免許はちゃぁんと持っとるわ」と憎まれ口を叩いて、心はひらひらと手だけを振って颯爽と歩いていく。
「見た目だけやったらええ女なんやけどな、あの自由さはついていかれへんわ。
玄武の抱えとった暗殺集団、
白虎の“切り札”
どっちにしろ、変人やってことやな」と俺がため息をつくと
「俺も同感です。でも心先生のおかげで色々知れて良かったですね」
「ああ……でも
世界一と言われた殺し屋がのうのうと家族作ってファミリーごっこしとる言うのはなー
あいつが誰かの“父親”言うんが未だ信じられんわ。
まぁ?根底には玄蛇の血を絶やさないため、
相手は誰でも良かったんやろうけどな」
俺が言うと
「そうでしょうか」
響輔が静かに言い、心と同じように小さくなったタバコを消す。
「何が言いたい?」
「子孫を残すため―――誰だって良かったわけじゃないと思いますよ?
タイガさんのPCに送られてきたメールの動画。
あそこに
“愛”
を感じました」
愛―――
かぁ
でも、俺たちは本当の意味でまだ真実の“愛”てのを
知らない。
「「愛って何やろ―――」」
俺と響輔二人の声が揃って、二人して顔を見合わせ、苦笑いを浮かべるタイミングも一緒。
これも一種の愛情なんかなぁ。
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