。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
ん??
タイガ?
何してんだ、あいつ。こんな所で(←人のこと言えません)
タイガはひどく慌てた様子でスーツの裾を翻しながら、階段を駆け下りてくる。後ろを気にした様子で……
それは、誰かから逃るように―――いつもの余裕が微塵にも感じられなかった。
タイガはあたしが昇ってきたことに気付かなったのだろうか、かなり慌てた様子で
「おいっ!」
と言う前に、タイガと激しくぶつかった。
体格の差か?あたしはあっけなくその場で尻餅をついて、その節に持っていたケータイが床に転がった。
「ってーーーーぇな!!おい!」
思わず睨み上げると、タイガがびっくりしたように目を丸めた。
ホントにあたしの姿が目に入ってなかったんか。
「うさぎちゃん……」
タイガは目を開いてあたしを見下ろしてる。
何だよ、その幽霊にでも会ったような顔は。
「ごめん……大丈夫?」
タイガはあたしを助け起こしてくれて、
「何だよ、そんな急いでどこ行くって言うんだよ。便所ならここから出て右にあるぜ?」とあたしが怪訝そうにしていると
「いや、ちょっと…急用で」
何だよ、トイレじゃねぇのかよ。
タイガはいつものふざけた様子ではなく、ちょっと後ろを気にするように背後に顔を向け、それでもすぐにあたしに向き直ると、床に転がったケータイに気づいて、それをそっと拾った。
あたしのケータイに白へび様のストラップと今日買ったばかりの戒とおそろの“K”のイニシャルストラップがくっついていて、タイガは白へび様のストラップを指でなぞると
「白へび……」
と口に中で呟いた。
「おう、おめぇが白へび様は守り神だって言ったろ?これは千里が盛岡で買ってくれたストラップだ」
「盛岡……千里……?」
とタイガは不思議そうに目を細め
「一ノ瀬 千里だよ。千里のおばちゃんのこと知らないのか?」
タイガは覚えがないように首を捻り
てか、ホントに千里のおばちゃんと顔見知りじゃないんかよ。