。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



でも


「な――――…にしやがんだ!!!!てめぇ!!死にてぇのか!」


あたしはタイガを突き飛ばすかのようにタイガの胸を押し、唇を乱暴に手の甲で拭い、拳を振り上げると


パシッ


タイガの手があたしの拳を遮った。


手首を掴まれ、あまり力を入れてないように思えたが、実際それはかなりの力であたしの拳が押し戻される。




「逃げないでくれ。


君は僕の



大切なお姫様なんだから」




な――――……に言ってんだよ。


歯の浮くようなくっさい台詞だったが、何故だか今のタイガにそう言われて、「さむっ!」ってならなかった。


それ程タイガは真剣だった。切れ長の眼が切なそうに揺らいでいる。


こんなタイガを見るのは―――初めてだ。




逃げなきゃ―――


闘わなきゃ―――




あたしの本能がそう語っているのに、でもあたしはそうしなかった。


いや、できなかった。


何故だか金縛りにあったかのように、その場を動けない。


まるで足の裏を接着剤でくっつけられたように、少しも動けない。


タイガの切れ長の、どこまでも底が見えない黒い瞳に見つめられて、でもどこか強い意思を漂わせている、この視線から目が逸らせない。



タイガの手が再びあたしの頬を包み





「お嬢



今だけは、僕を受け入れて―――」





そっとそう囁かれて、タイガは目を伏せると、長い睫がタイガの白い頬に影を作った。


そしてその睫が再びあたしの頬を掠めていき、あたしは抵抗と言う抵抗もできず


ただ黙って





口づけを受け入れた。






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