。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
■□ TAIGA □■
■□ 大狼 □■
くっそ、あいつら本気でやりやがって。
僕は忌々しそうに眉をしかめ、蹴られた脇腹を押さえて、電柱に寄りかかった。
口の中で鉄の味を感じて、それはすぐ不快に口の中を満たす。
血のりを吐き出すと、地面に赤い染みを作った。
だが
立ち止まってる暇はない。
白虎のガキ共に、和則の存在を知られた―――
どこかに電話ボックスがないか探したが、まるで深い藍色のベールを纏った夜空がこちらを押しつぶそうと迫ってきそうで、いつもより尚暗く感じたその道で、電話ボックスどころか街灯すら乏しい。
御園医院から離れた裏通り。昨今のケータイ電話の普及で、電話ボックスの数が圧倒的に削減されている事実に再び舌打ちをしたくなかった。
仕方なしにスーツの内ポケットの中を探ろうとして、
―――止めた。
僕のケータイで今連絡するのは危険過ぎる。
どこで“ヤツ”に嗅ぎつけられるか分からない。
こんな裏通りに電話ボックスなんて無いか。表通りに出ようとしたが、この格好で万が一職質にでも遭ったら危険だ。
くっそ
踏んだり蹴ったりだな、今日は。
だが悩んでいる時間もない。
ため息をついて歩き出そうとして、遠くの方で狼の遠吠えを聞いた。
この都会に狼が生息しているとは思えないし、ましてや遠吠えなんて聞こえやしない。
鳴き声のした方に顔を向けると、ふと足元に小さな気配を感じた。