。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
脱衣所でローブを脱いでいると、肩からローブがすり抜ける際、椿紀が出し抜けに顔を出して、彼女に背を向けていた僕はびっくりした。
椿紀はきっとそれ以上にびっくりしたに違いない。
「えっと………“それ”って本物?」
と、聞かれて“それ”が意味するものがすぐに分かった。
「………本物」
僕はローブを羽織りなおすと、脱衣所を出た。
「そうゆうことだから。俺なんかと関わらない方がいい」そっけなく言うと
椿紀はすぐに逃げ出すかと思いきや、
「え……お風呂は?」
と、的外れなことを聞いてきて
「は?これ見た後だぜ?ヤバイ男だって分かって言ってんの?」と聞き返すと
「んー……ヤバイ男ってのには変わりないと思うけど、だってもう無理」
え?言ってる意味が分からず目をまばたきさせていると
「だって私恵一のこと大好きだもん。今更、別れるなんて無理。
私は恵一が何者でもいいの
大狼 恵一、あなたはあなたで、代わりはいないの。私も代わりが欲しいわけでもないし」
と、椿紀はあっさり言って、でもその顔には僕が知る明るい笑顔が浮かんでいた。
「違うよ」
僕は言った。絶対隠し通しておきたい秘密の一つを。
「俺の本当の名前―――
俺は
玄蛇 飛影」
僕が言うと、またも椿紀はあっさり。名前を偽っていたことは、彼女にとってそれほど重要視する問題点ではなさそうだ。
「ふーん、かっこいい名前だね。恵一もいいけど、飛影ってもっとかっこいいじゃん」
と、またも笑った。