。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
あたしは口をぱくぱく動かせてテーブルをトントン。
「場所を聞け」
口パクで言うと、千里は真剣な顔で大きく頷き
「エステってどこの……?」
と声を低めて、電話越しにおばちゃんに聞いた。
「――――は?イヴリン………?……え?いや…ちょっと聞いただけ。んじゃな」
千里は動揺しながら通話を切った。
「イヴリンって聞いたことある!」
あたしはケータイを手にその店のHPで場所を調べようとした。あたしにしちゃ珍しく冴えてんだろ?
「聞いたことある…てお前、エステサロンだぜ?」
千里が訝しむように眉を顰めたが
「行ったことはもちろんねぇよ。あたしゃただの女子高生だ。
でも聞いたことがあるのは確かなんだよ……どこでだっけかなぁ」
HPを探りながら、う゛~ん、と首を捻っていると
「あ、そうだ。叔父貴のグループ会社の一つだ」
そう言うと同時だった。
パっ
HPが開いて、あたしと千里は顔を合わせた。
―――――
――
イヴリンは正式名称、『Evelyn’』と言う小洒落た名だった。
都内の一等地にサロンを構えていて、その店構えは隠れ家風の一見してお洒落な洋館にも見える。
その洋風の建物を眺められる場所であたしたちは電信柱からそっと顔を出すこと数分。
「ありがとうございました、一ノ瀬様。またのご来店お待ちしています」
と言う明るい女の人の声が聞こえて、ひょっこり顔を出すと
黒いワンピースに身を包んだおばちゃんがツヤツヤ顔でにこにこ、出てきた。