。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。







お前……――――……






耳打ちされてくすぐったいとか、内緒話だぁ…とかそんな細かい感情色々ふっ飛ばし


あたし!!!?それも夜明けのコーヒーって!!


そ、それって、それって!!!


カァー!!!!


あたしはまたも急激に顔が熱くなるのが分かってまたもレモンスカッシュを一飲み。


今度は熱くなるどころか、心臓がひっくり返りそうなほど勢いよくバクバクと脈打っている。


一気に飲んだからかな…さっきの柔らかな刺激から一転、辛い炭酸が喉を通り抜け


あたしは思わず咳き込んだ。きっとレモンの酸っぱいところも一気飲みしちまったんだな…うん、そうだよ。


げほっごほっ


盛大にむせていると、叔父貴があたしの背中をなでなで。


「大丈夫かぁ?」


お、叔父貴が!!変なこと言うからっ!!


あたしは心の中で喚いた。


目をぱちぱち口をぱくぱくさせていると、叔父貴はまたも涼しく笑い





「冗談だ。


こないだも言った通り―――お前の行きたいこと、したいことをしよう。


一緒に居てくれるだけで、俺は最高に幸せだ」





叔父貴は遠くを見るような目つきでうっすら笑い


嘘だ……冗談なんかじゃなく、あれは本気だ。


とあたしがまだ警戒したように疑っているときだった。




「龍崎さん、お車が到着いたしました」



喫茶店のママだろう、上品なワンピースに身を包んだこれまた超ド急の美人がタイミングよく声を掛けてきて


「時間切れ―――か」


叔父貴は名残惜しそうにのろのろと席を立ち上がった。


あたしも立ち上がる。







「また突然に雨が降ることを―――祈ってるよ。



そしたらまた―――




お前と一緒に居られる気がする」






叔父貴は切れ長の目を切なく揺らしてあたしを見下ろし、あたしはその視線に―――


やっぱり同じものを返せなくて、慌てて逸らしちまった。


きっと大人の女だったら叔父貴の目をじっと見て、相手も自分でも傷つかない返しをするんだろう。


けどその技は一生経っても―――身に付けられない気がした。


叔父貴が会計をしている間、


分厚い窓ガラスの向こう側で、黒いセルシオの姿が歪んで映っていた。





あのセルシオは―――、一体いつからあそこにいたんだろう。









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