。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
響輔の説明を聞いて俺たちは揃ってそっちの方に視線を向けた。
響輔の言う不審車は、俺たちの視線に気づいたのか慌てて発車しだし、俺たちとは反対方向に走り去って行った。
実はあの車…さっきも見た。進藤と合流して三人で歩き始めたぐらいのときだった。
運転席まで見えなかったが、こう重なったのならあの淫行コーチに違いない。
「響輔、ナンバー控えておけ?一ノ瀬のオヤジが刑事だったよな。
朔羅に頼んで、パトロールを頼んでもらおうぜ」
立ち去って行った車の方を眺めて俺はケータイを取り出した。
「マジでストーカーじゃないスか!」
進藤が目を吊り上げて俺に凄む。
「俺に言われてもなぁ……あー、もしもし?俺」
俺は進藤に適当に相槌を打ち、電話の相手に喋りかけた。
「今、下に居るんだ」
それだけ言うと、すぐに二階の出窓に引かれたカーテンを開け、ガラス窓の向こう側に新垣 エリナが顔を出した。
それでも用心しているのか窓は開けず、カーテンの隙間からそっとこちらの様子を窺い、俺の姿を見ると安心したようにゆらゆらと手を振ってきた。
『龍崎くん……それにお兄さんも……それと進藤先輩??』
「お兄さんじゃないんだけど…ま、いっか。進藤はおまけだ。こう見えてもバリバリのヤンキーだしな。
魔除けになるだろ?」
俺が笑うと新垣 エリナも窓ガラスの向こう側で苦笑い。
『せっかくここまで来てくれたから、上がって?』
と言ってくれたが、せっかくのお誘いを断った。
「いや、いいワ。それよりカーテン閉めて部屋に籠ってろよ?
俺らは二三周パトロールしてから帰るワ」
『龍崎くん―――……ありがとう…』
新垣 エリナは声を震わせた。今にも泣きだしそうだ。
相当怖い目に遭ったんだな。
俺は不審車がうろついていることは言わなかった。
これ以上怖がらせる必要もない。
「それより新垣さん、田崎って男知ってる?」