愛しても愛されない
携帯を取り出すと慣れた様子で私の電話帳にアドレスを入れていた。

私に携帯を返すと、手の中の携帯が震えた
♪~~

「今電話してるの俺の番号ね♪」

やっぱこうゆうの慣れてるんだろうな…
と思いながら、不思議と嫌な気はしなかった。

「あの、名前は何て登録したらいいですか?」

名前すら聞いてない事に気付き、電話帳の登録画面を開きながら聞いてみた

「そうだな〜、とりあえずコウジで♪」

とりあえず?って事は源氏名か偽名かな…
そう思いながらも、コウジ (ホスト) と打ち込んで登録をした。

「オッケーです、登録しました」

携帯を鞄にしまい、顔を上げると含み笑いをしながらコウジが珍しそうに見つめていた

「な、なに?」

見つめられていた事に気付いてなかった私は思わず動揺してしまい声が上ずんだ

「いやぁ〜何も聞かない女の子って珍しいなって思って。ほら、俺とりあえずって言っただろ?普通はとりあえずって何?って質問とかしてくるからさ」

聞かない事が嬉しい事なのかな、疑問に思いながら

「ホストだったら源氏名だろうし、嘘の名前か本当の名前かなんて分からないから信じるしかないですもん。」

自分で言った言葉なのに少し寂しく感じた。
すると、コウジはククッっと笑いながら
手で私の顎をクイッと上に向かせた
少し意地悪そうな笑みを浮かべるコウジと
目が合った


「へぇー、その年でそんなに落ち着いた考えしてる子初めてだわ。俺、物分りがよくて聞き分けが良さそうな子好きよ」


見ず知らず人にこんな事をされたら嫌悪感しかないはずなのに、私は不覚にも血流が一気に早く動き出して熱を帯びたかのように胸が熱くなるのを感じた。


「いやいや、からかわないでくださいよ〜」

と悟られないように笑いながらパッと手を振りほどいた

これくらいで、トキメクようなちょろいやつだったっけ…なんて考えながら自分を落ち着かせる。

「じゃあ、俺達仕事に戻らなきゃいけないから寂しいけどいくね!連絡返せよ(笑)」

寂しいけど…って、そうゆうことをサラっと言っちゃうあたりがホストだよなぁ。と思いつつ心のどこかでドキドキしてしまう自分がいた。

じゃあね と手を振ると他のホストと一緒に私達と反対方向に歩き出していた。

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