godlh
「眼が真っ赤だよ。」
「えっ?」
慌てて鞄を探し、鏡を出そうとした。
「あっ。」
あゆみは、彫野に忘れ物を届けるために、何も持たずに家を出た事を忘れていた。少し鞄を探し、途中でその事に気がついた。
「一之江君、鏡持ってない?」
慌てて全身を、くまなく探した。けれど、いつも持ってない鏡を、今持っている訳がなかった。
「惟?」
惟に助けを求める。本当に、こいつはなんでもお見通しだ。小さな鏡を、僕に差し出した。
「これで、見て。」
惟に借りた鏡を、まるで自分のものであるかのように渡した。
「ん?」
彼女は、不思議そうな顔をまた、した。僕も、惟も、はじめ、それが意味する事がわからなかった。
「ねぇ、一之江君。どっちの眼?」
愛内さんの眼は、両方とも真っ赤だ。僕は、正直に伝えた。
「本当に?何もなってない感じだけど。」
血の気が引いていくのがわかった。それは、惟も同じだった。ただ、それを愛内さんには気がつかれないように、少しだけ振り向いて、惟に合図を送った。
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