godlh
 物陰にいたあゆみは、涙を浮かべていた。
 彼女であるはずのあゆみは、まだ、一度も彫野の家に行った事はない。それを、梢に先を越されるなんて、なんのための彼女なんだろう、そんな疑問が頭の中で膨らんで、大きな音を立てて破裂しそうだった。
 ふたりに聞こえないように、声を殺しながら泣いた。
 つらいとか、悲しいとか、そんな言葉で言い表せない感情が、あゆみの中から涙と一緒に溢れだした。
 あゆみの瞳は、ゆっくりと赤みを消していった。
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