godlh
「秀郎・・・。」
小さな声で、惟が話しかけてきた。でも、ムカムカするこの感覚が、僕の感覚を鈍らせていたのだろう、まるで、気がつかなかった。
「秀郎・・・。」
「秀郎・・・。」
惟は何度も話しかけてきた。惟は何回、話しかけてきたのだろう。僕が、惟の事に気がついた時には、少しあきれていた。
「どうしたんだよ。お前、今、すごい顔してたぞ。落ち込んだと思ったら、急ににやけたり、かと思ったら、今度はすごい怖い顔してるし、何かあったのか?」
ビックリした。
自分が、まさかそんな顔をしているなんて、考えもしなかった。それに、勘のいい惟が、こんな風に聞いてくる位だから相当おかしかったのだろう。
そんな風に改めて言われると、とても恥ずかしくなった。僕は、恥ずかしさをごまかしたくて、わざと聞き返してみた。
「そんなすごい顔してた?」
「お前、自分で気がついてないの?本当に大丈夫か?」
僕は少し考えた。さっき、僕の中に生まれたこの色々な気持ち。これは、本当にみんなの気持ちと同じなのだろうか。それとも僕だけが持った、特殊な感情なのか。僕の中だけに、止めておく事がとても難しく思えた。
「惟、あとでいいかな?」
惟に相談すれば、どうにかなる気がした。
だから、素直に惟に甘えてみる事にした。
< 14 / 206 >

この作品をシェア

pagetop