godlh
 あいつの動きが止まっている。それは、一見チャンスにも思えた。でも、動けない。体が、本能が、動くなと言っていた。惟の眼も、様子を伺えと言っていた。
 「いいか。倒す必要はないんだ。チャンスを見つけて逃げろ。」
 惟の言葉を、頭の中で繰り返した。
 汗が、じんわりと額から出てきた。こんな嫌な汗ははじめてだった。そして、無意識に呼吸を止めていた。集中するには、この方が調子いいらしい。
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