godlh
そんなに都心ではない小さな街でも、朝の電車はそれなりに混んでいた。梢も、リアも初めてのラッシュに閉口していた。右に、左に体は揺れ、その度に体が半分になるんじゃないかってくらいに押しつぶされた。
車内アナウンスが聞こえて来た。ふたりが降りる駅だ。
「お、降ります。」
元気な梢の声ですら、か細くなってしまうくらいに、ふたりにとっては衝撃的な体験だった。
「す、すごかったね。」
そんな梢の言葉に、リアの反応はなかった。気になって周りを見ると、リアは、すぐ後ろでしゃがみこんでいた。
「大丈夫?」
「うん。少し休めば良くなるよ。ちょっと・・・、立ち暗みしただけだから。」
「そう。じゃあ、あそこのベンチで少し休もうか。」
そう言って、ふたりは駅の少し汚れたベンチに腰掛けた。目の前には、何人ものサラリーマンや学生達が足速に歩いている。そんな光景を見たせいだろうか、まだ、ふらふらしながらも、リアが立ち上がった。
「もう大丈夫。行こう、梢ちゃん。あゆみちゃんを、迎えに行かなきゃ。」
「うん。わかった。でも、調子悪くなったら言うんだよ。」
リアは、何も言わずに頷いた。

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