godlh
失恋した時、隣にいたのは友達
彫野は黙っていれば、かなりの男前だった。
愛内さんは、今更言うまでもない。
そんなふたりが一緒に歩いていると、それだけで絵になった。すれ違う人たちが、何人も振り返りふたりの事を見ていた。

「すごい。格好いい。」
「あの子、かわいい。」

でも、ふたりはそんな周りの言葉など、まるで耳に入らないくらいに、楽しそうに会話していた。
駅を降りると、ますます注目の的だ。同級生たちが、みんな騒いでいる。
生徒達のざわめきは、もはや、ざわめきと言うレベルを越えていた。周り中にいる生徒と言う生徒が、ふたりの事を話している。
僕も、そのざわめきの中にいた。

―――愛内さん・・・。

胸が痛い。時には心臓を鷲掴みされたかのように、そうでなければ、ナイフでひとつきされたかのように、いろいろな痛みが順番に襲いかかってきた。
泣きそうだった。
だけど、登校中だから、周りには同級生達もたくさんいる。喉の辺りがひどく痛い。その痛みを堪え、僕は涙を元あった場所に戻した。

「秀郎。」
僕の気持ちは、どん底まで沈んでいた。その気持ちを、見ていたかのようなタイミングで、惟が声をかけてきた。
このタイミングは、やばかった。どうしようもないくらいにやばかった。元の場所に戻したはずの涙が、また顔を出し始めた。
「惟ぃ。」
それ以上、言葉はいらなかった。勘のいい惟は、全てを悟ってくれた。
< 23 / 206 >

この作品をシェア

pagetop