godlh
今、あゆみが、居ていいと思える場所は此処だけだった。誰もいないとわかっていながらも、叫んでみた。
「誰かいませんか?」
思った通りだ。誰の声も聞こえない。でも、諦めず声をかけ続けた。
「誰かいませんか?」
「誰かいませんか?」
「誰かいませんか?」
あゆみの声が、彼女の心の中にある悲しみの深さを表していた。何回も叫んでいるうちに、もう叫んでいるとは言えないくらい、か弱く、かすれ、その形を成さなくなっていった。
―――やっぱり誰もいないよね。
そう思いながら、最後にもう一度だけ叫んだ。
「だ、誰かいませんか?」
それは、本当に一瞬だった。何を言っているかも、はっきり聞く事は出来なかった。でも、確実に、あゆみの問い掛けに対する返事だった。
―――ありがとう・・・。
それは、どこの誰かもわからない相手に対しての、あゆみの本当の気持ちの表れだった。
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