godlh

痴漢

　愛内さんは、おばあちゃんとふたり暮らしだった。先生に聞いた話だと、彼女の両親は、今、海外で暮らしていると言っていた。そして、そのおばあちゃんも、最近体調が優れず、大きな病院の側に引っ越したとも言っていた。
　だから、彼女は少し学区から外れた所に住んでいて、学校まで電車で来るようになった。

　彼女は、どうしていいかわからなかった。
まだ、電車通学をして間もない事もあり、これがはじめての体験だった。

　痴漢。

　この卑劣な行為に対して、彼女はどう対処していいのかわからなかった。うつむいて、体を小さくして必死で身を守ろうとした。しかし、その彼女の行為が、さらに痴漢の衝動を加速させた。
　―――もう、だめ。
　そう思って、彼女は少しだけ振り向いた。そこには、いかにもモテなさそうな、薄汚いねずみ色の背広を着たサラリーマンが立っていた。どんなに、彼女が睨んでも、それは男にとっては快感でしかなかった。
　―――うわぁぁ。思ったよりかわいい子だぞ。
　そう思うと、彼女に触れている手のひらに、いっそう力がこもった。あまりの力に、彼女は苦痛の表情を浮かべた。
　―――あと、少しで駅に着く・・・。