godlh
勝利の笑み
「あ、あのね。彫野君、これはね・・・。」
考えがまとまっていなかったリアは、どうとでも取れる言葉を彫野に投げかけた。その言葉に、彫野は反応しなかった。
「どうしたの?もう、次の授業始まっちゃうよ。」
笑顔でそう言った。けれども、リアも、梢も、その笑顔の奥にあるドロドロしたものを感じた。それは、これ以上ここにいるのは危険だと、本能が告げているようだった。
「じゃ、あゆみ、私たち先に行くね。」
心にもない言葉をあゆみに告げ、ふたりは全力で駆けだした。
「大丈夫?」
今度の笑顔は、本当の笑顔だった。
そして、あゆみの涙を手で拭った。
「あ、ありがとう。」
彫野に手を取られ、あゆみはゆっくり立ち上がった。
「あのふたりと何かあったの?」
「ううん。何でもないよ。」
「何でもないって事は、ないんじゃないかな?ほら、この涙もそう言っているよ。」
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