godlh
 電車の扉が開き終わらないうちに、彼女はホームに駆け下りた。
 ―――だ、誰か助けて。
 その瞳には、涙が浮かんでいた。

 電車はゆっくりとホームを出た。
 ―――あの子、この駅で降りるんだ。今度、待ち伏せしようかな。
 男は、そんな事を考えながら、手のひらを見つめ、ニヤニヤしていた。周りの乗客たちは、そんな男の姿を見て、少し距離を置いている。その目は、明らかに軽蔑の眼差しだ。
 ―――ふふふ。どんな風に思われたって関係ないね。僕は勝者だ。あのかわいい子の躰に触れ、そして自分のもののように扱ったんだ。お前たちに、そんな崇高な行為が出来るのか。あの天使の苦悶の表情を間近で見たのか。見てないだろう。俺が、勝者だ。
 男の中に、罪と言う言葉はなかった。

 “えらそうに。”

 男の全身に、落雷に打たれたような衝撃が走った。いや、実際に落雷に打たれていた。全身にみみず腫れのようなものが出来、やけどをしていない所はないくらいだ。
 衝撃と同時に、男は電車の車内に倒れた。ちょうど、他の乗客が、男を避けるようにしていたのが、功を奏し、誰にもぶつかることなく勢いよく倒れた。 
 そして、車内に、肉の焼けこげた臭いが充満した。
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