godlh
まわりの空気は一瞬にして凍り付いた。
鈍い音が、少し離れていた僕のところまで届いた。それは、たぶん誰もが嫌がる醜く、汚い音だった。
愛内さんは、どうしていいかわからない様子だった。
きっと、自分に対するあいつの態度と、目の前で起きている信じられない光景。とても、同一人物が行っているとは思えなかったはずだ。だから、一歩も動く事が出来ず、ただ、大河内が殴られているのを見ていた。
大河内は、ぐったりして動かなくなった。
それを確認すると、ゆっくりと愛内さんの方に振り向いた。
「大丈夫?怖くなかった?」
その笑顔は、この世のものとは思えないほど穏やかで慈愛に満ちていた。すると、愛内さんは、まるで何もなかったかのように、また寄り添いそのまま行ってしまった。
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