また、近いうちに。
に
夏。
蝉、西瓜、海、入道雲。
祭り。
一年で一番暑くて一番ワクワクする季節。
ユカと過ごすようになって半年が過ぎた。思い返せば...特にこれと言って取り正すこともないのだがそれなりに楽しい半年だった。他人からしてみればそこらのカップルが手を繋いで歩いている、ただそれだけの何でもない風景に見えたのだろうが、俺は違った。隣にあるユカの手はとてつもなく遠くに感じたし、やっと突かんだ指先は溶けるように熱かった。喧嘩もなく、良くも悪くもだらりと過ごせたのはユカの寛大な心の広さによるものだと俺は思う。
「なんか食べたいものある?」
じゃりじゃりと歩きにくい川原の上を上手に人をよけながら歩くユカの足取りはいつも以上軽いものだった。
夏祭り。
彼女と夏祭りに行く。響きのいい言葉だ。
「ねぇ、何食べる?」
ユカにもう一度聞かれ「ん、何でもいいよ」と返す。一瞬、宙を見つめたが
「じゃありんごあめね」と即答されてしまった。本当のところりんごあめはあまり好きではなかったが、たまにはまあいいかと思う。少し長い列に並んで順番を待つ。ざわめく人ごみの中、不意にTシャツを引っ張られたような気がして振り返ると彼女が裾を摘んでいた。「なに?」とでも言いたげな指すような目線に少し胸が高鳴ったが俺は冷静を装った。
「好きなの?りんごあめ」
思っていたよりも大きな声が出てしまって自分でも驚いたが
「まあまあかな」という間の抜けた彼女の返事にそれはどうでもいいことになってしまった。なんで「まあまあ好きな」りんごあめの列に俺たちは並んでいるのか。
威勢のいい屋台のお兄さんから丸くてテカテカ光る赤を1つ受け取って人混みから少し離れたところで腰をおろした。
「なんで一個?」
「半分でいいから。ん。」
そう言って彼女は歯形のついた赤を、同じ色で染まる頬で突き出してきた。
甘い、あまい、りんごあめ。