オオカミさんと子リスちゃん
音も立てず近寄ってきたので、大上さんの気配に全く気づかなかった。

私の体を大上さんが反転させた。


「俺以外の男に誘われているんじゃねえよ!」


口を開いた大上さんが突然私を怒鳴りつける。

私はびっくりして身を縮めたが身に覚えのないことだ。


「……誘われてないけど」


反論する。


「誘われていたじゃないか!田中に」


「……誘われた!?田中君に……ああ、あれは校門ま途中まで一緒に帰ろうって言われただけで……大上さん、もしかして、見ていたんですか?」


「偶然近くにいたから、目にはいったんだよ!」


「そうなんですか……」


私は無実の罪で怒られているようで、納得いかない。


「今日も田中の隣座ってあいつに笑顔振りまいていたよな。」


「別に普通に話していただけだよ」


「楽しそうに見えたけど……あいつのこと、もしかして好き、とか!?」


「……好きとか特に……普通に会話してるだけだよ……あっ……」


大上さんは正面から突然私を抱き寄せた。

そして私の肩に額を押しつけ密着する。

私は大上さんの上半身を押しながら離れようとしたが、彼は腹部に回した手にさらに力をいれたので逃げることもできない。





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