【完】神様のうそ、食べた。


「欠陥品なわけあるか。ばーーーか」

「でも、彼にとっては欠陥品だし」

「だから保育士して子どもに触れ合おうと? ってかお前、諦めるの?
どんくらい妊娠できないのか、どんな治療しんのかって聞いた?」

小降りになってきた雨に、部長は舌打ちすると濡れた髪を掻き上げる。
水族館からは、雨なんて関係ないような歓声が聞こえてきている。


「よ、く覚えてない、です。ショックで、……でも、ピルは処方されました」

「どーせ、診断書持ってんだろ、見せてみろ」

なかなかそこで動けないでいる私は、黙って部長に鞄を差し出した。
部長は、最初からそこにあるのを知っていたかのように、ファスナーを開けてその中身を取り出した。
二つ折りにされた診断書を。

――ただ黙って読んでいる。







「ふーん。分かんねーー」

部長はそう言うとクシャクシャと丸めて、





その紙をむしゃむしゃ食べた。







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